livingroom diary

愛されるアラカンをめざしてw

「家」とはなにか

私が今住んでいる集合住宅の、ベランダ向かい側にある家が絶賛片付け中です。


ちょうど10年前に、同じ町内から今の住まいに引っ越して来たのですが、その時はおばあさんが一人で住んでいて、大きな犬が2匹いました。毎日犬の散歩に、犬に引きずられるようにして細身のおばあさんが出かけ、近所の人に声をかけられても静かな感じの方でした。


数年経ったところで、おばあさんを見かけなくなり、駐車場に時々赤い車が来るようになりました。犬を連れて来ていて、犬が吠えるのですぐわかったのです。近所の人が声をかけていて、「ええ、母は姉のところに居るんですが…」と話していました。


そのお嬢さん?らしき人は割と頻繁に来て、時々犬を置いてまた出かけるらしく、犬がずっと吠えていた事もありました。犬も高齢化していたんだろうな…と思ったり。


その家は門の回りに植栽があって、家も石造りの「豪邸」でしたが、植栽も遂に数年前から手入れされる事もなく、イチョウの木から落ちる落ち葉を誰も片付ける事なく、近所の人が清掃していたようです。


そして、今月になってから遂に大がかりな整理が始まりました。もうこれで4日連続で業者らしき人が、布団やら家具やらをトラックに満載にしては出て行き、それでもまだ終わっていないようです。おばあさんは亡くなられて、娘さんたちが処分を決めたんだろうな、と思いました。



実を言うと、私の実家も、義実家も一軒家で、実家は老母一人、義実家は義姉が一人で住んでいます。そういう我が家は、夫、娘二人と家族4人ですが、ずーっと賃貸暮らしです。
今の住まいも、大人4人で暮らすには中途半端で、だったらどちらかの家に同居させてもらって生活費を払えば、独り住まいの方も心配が減るし、こちらも助かるし、などと思った事もあるのですが、諸事情でそうも行かないんですよね。


ベランダ向かいのお家も、立派で二世帯が十分棲めそうに思えるのですが、引っ越して来た時から、2階の窓のシャッターやカーテンが開いているのを見たことがありませんでした。



私が住んでいるのは、夫の実家の近くで、かれこれ20年になります。それも、いろいろと事情があって、その時々、当時の年齢では思いもつかない事ってあるものですよね。


「家を買う」という行為にしても、最後は配偶者のどちらかが居なくなり、足が動かなくなったら、2階へ上がれなくなったら…そして、子供に相続や処分を依頼することになったら…「家」はもう財産ではなく、負担になるものかもしれません。



「お早よう」という、小津安二郎の映画があります。晩年の作品なので、原節子も出て来ないし、珍しいカラー作品で、ファンにはどういう評価なのかは知りませんが、この映画に出てくる舞台に、今私が住んでいる地域は面影を残していて、途中から釘付けでした。

Good Morning (Ozu, 1959) - farts


多多摩川土手を歩く少年たちの手前、平屋建ての一軒家が隣接

当然、お隣の家が丸見えw 気にしてないw


このような平屋建てが、引っ越して来た時は地元にまだ残っていました。さすがに今はもう見かけませんが。ただ、場所は映画の舞台をよく調べているサイトを参考にしたら、少し違う場所のようでした。でも、多摩川下流の昭和の風景は、大体似ていたんだろうと思います。


実は、今の住まいの表通りの近くも、このような家がたくさん建っていて夫が小さい頃、住んでいたらしいです。そんな小さいマッチ箱のような家が立ち並ぶ中で、ベランダ向かいの豪邸は当時からすごく目立っただろうと思います。その当時建っていたものかは怪しいですが、佇まいや、門扉や玄関の飾りなどから見ても、1970年代くらいの建物ではないかと思ってます。


夫はまだ幼稚園生だったらしいので、義姉に聞いてみたところ、うっすらとおぼえているようで、ああ、〇〇さんだよね…娘さんも同じ世代だったかなー、でも交流なかったかな。と言ってました。


家を建てた頃、さぞや自慢の家で、帰って来るのが、家でくつろぐのが楽しみだったのかな。おばあさんもまだ若くて、娘さんたちも可愛らしく、成長が楽しみだった事だろうと、知りもしない家族の情景を妄想していました。
大きなワンちゃんを飼って、可愛がって育てて、娘さんたちは無事独立して、家族の幸せも続いたことでしょう。


そういう事では、私の実家も、建替えした時は毎日人を招いて、手伝いをさせられたものだったとか、義実家も一番多い時は3世代6人が住んでいて、我が家も何かと訪問して、暮れ正月は8畳間にテーブルを2つ並べて宴会が行事になっていました。


独り、と言っても、実家も、義実家も、まだしばらく一人を愉しみたいような感じはあります。それぞれ配偶者の逝去でドタバタがあり、一周忌を過ぎてようやく一人の日々を愉しめる、そんな風に見えています。今のところは。


そんな事を考えながら、60代が見えてきた私たち夫婦はいまだに賃貸で、今後どうするつもりなのかな…と他人事のように考えたりしています。


そして、結局


「今考えてもしょうがない、せめてどうなっても良いようにモノを減らしておかないと…」


となる、の繰り返しです。